食品薬品部薬用資源科長 姉帯正樹


木々の芽も膨らみ始めました。雪解けと共に野山にでかけ、山菜採りを楽しみにしておられる方も多いと思われます。しかし、ちょっと待って下さい。野山には誤って食べると命にかかわるトリカブトなどの毒草も生えています。北海道でも毎年のように毒草による食中毒が発生しており、注意が必要です。今回は、北海道の代表的な山菜と毒草について簡単に説明します。

ニリンソウとトリカブト(共にキンポウゲ科)
 ニリンソウはアイヌの人々にとって重要な食糧でした。現在でも東北地方と北海道では山菜として利
用されています。くせのない、あっさりとした味が人気です。一方、トリカブトは古来より有名な毒草で、日本三大毒草の一つに挙げられるほどの猛毒を有します。明治9年に禁止されるまで、アイヌの人々はその毒を矢尻の先に塗って、狩猟に使用していたほどです。
 トリカブトの芽出しの頃(写真1)はニリンソウとの区別が難しく、しかも同じようなところに生えているため、毎年のように誤食による中毒事故が起こっています。トリカブトは全草に毒があり、葉を数枚食べただけでも中毒することがあります。花粉も有毒で、蜂蜜による中毒例があります。

写真1 トリカブト (有毒)

ニリンソウは春に1〜3個の白い花を付けます(写真2)ので、花の付いたものだけを選ぶと安全ですが、繁殖力が弱い植物ですので味見程度にして下さい。トリカブトは秋に紫色の花を付けます(写真3)。

写真2 ニリンソウ 写真3 トリカブトの花 (有毒)

オオヨモギ(キク科)とトリカブト

 古くからオオヨモギ(エゾヨモギ)はヨモギ、もち草などと呼ばれ、その若葉は草もちの原料などに利用されてきました。しかし、若葉はトリカブトと似ており、注意が必要です。オオヨモギの若葉(写真4)には白い毛が密生して生えており、芳香があります。一方、トリカブトの葉には光
沢があり、毛はなく、香りもありません。

写真4 オオヨモギ

ギボウシ類とバイケイソウ(共にユリ科)
タチギボウシの若芽(写真5)にはほどよい苦味とぬめりがあり、「ウルイ」とも呼ばれ、山菜として利用されます。オオバギボウシなども同じように利用できます。バイケイソウは全草に有毒成分を含み、特に毒性の強い根は便所のウジ殺しなどに使用されました。その若芽(写真6)はギボウシにそっくりで、間違って食べて中毒する例が多く
あります。バイケイソウの葉は茎を囲むように付き、柄はなく、葉脈は葉の基部から先に向かって伸びています


写真5 タチギボウシ 写真6 バイケイソウ

ギョウジャニンニク、ユキザサとスズラン(共にユリ科)

 ギョウジャニンニク(写真7)は北海道を代表する山菜で、「キトビロ」などの名で親しまれています。また、ユキザサの若芽(写真8)には甘味があり、「アズキナ」の名で知られる万人向きの山菜です。スズランは可憐な花と香りで全国的に有名ですが、毒草であることはあまり知られていません
。スズランを生けておいたコップの水を飲んで中毒した例もあるので、注意が必要です。一般の庭にある観賞用のドイツスズランも、全草(特に花)に毒があります。ギョウジャニンニクの葉には独特の臭いがありますが、スズランは無臭です。ユキザサの葉と茎には白い粗毛が密生していますが、スズランの葉に毛はありません。

写真7 ギョウジャニンニク 写真8 ユキザサ

シャクとドクニンジン(共にセリ科)

 シャクの若芽(写真9)はセリとミツバを合わせたような香りと味があり、
「コジャク」と呼ばれる山菜です。このシャクと瓜二つなドクニンジンが札幌市内に生えており、誤食による中毒例もあります。ドクニンジンは古来有名な毒草で、哲学者ソクラテスもこの毒で獄中死したと言われています。ドクニンジンの茎には赤紫色の斑点(写真10)があり、嫌な臭いがします。シャクには白い毛と芳香があります。

写真9 シャク 写真10 ドクニンジン (有毒)

 当所薬用植物園(札幌市北区北19条西12丁目)は薬草標本園の他に、
種々の山菜と毒草を並べて植え、直接比較できるコーナーを設けています。このコーナーは新聞にも紹介され、所内見学者、山菜愛好家のみならず、食品衛生監視員や大学生の研修にも利用されています。札幌市保健所主催の山菜展に、鉢植えも貸し出しています。また、今年からゴールデンウィーク前に、一般の方々を対象とした「山菜と毒草の見分け方教室」を開催します。この機会にぜひご参加頂き、実物を見て触って嗅いで、しっかりと勉強されることをお勧めします。(連絡先:011-747-2746〈薬用資源科直通〉)
 野山に限らず、家の中の園芸植物や庭に植えている見慣れた植物のなかにも毒をもつものがあり、それらを山菜や野菜と間違って食べて中毒したり、触ってかぶれたりする例もあります。特に注意が必要な園芸植物については当所のホームページ「健康広場―身近な植物の意外な素顔」で解説してありますので、合わせてご覧下さい。

姉帯正樹(あねたい まさき)
1949年北海道喜茂別町生まれ。1977年北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了。理学博士。アルバータ大学博士研究員、日本学術振興会奨励研究員を経て、1982年から衛生研究所において道産薬用植物の化学的品質評価法、調製法などの研究に従事。1994年4月から現職。