感染症

感染症とは

病原体(細菌、ウイルス、寄生虫などの微生物)が宿主の体内に侵入し、そこで定着・発育または増殖し、何らかの影響を及ぼす事を「感染」といい、「感染」によって引き起こされる疾病を「感染症」といいます。

感染症への対応

我が国の感染症対策は、これまで1899年に制定された「伝染病予防法」により行われてきましたが、近年の交通機関の発達や環境の変化などの地球規模の変化に対応した対策や、患者の人権への配慮という点からも対応の見直しが必要となり、1999年から「感染症の予防及び患者に対する医療に関する法律(感染症法)」により行われています。
平成15年11月には、SARS(重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。))や西ナイル熱など新たにその流行が懸念される動物媒介感染症や、「痘そう」(天然痘)などバイオテロ等への対応を強化するため、感染症法および検疫法の一部を改正しました。 また感染症の類型の見直しを行い、一類感染症に「SARS」および「痘そう」(天然痘)を追加し、また旧四類感染症のうち鳥インフルエンザ等について、媒介動物の輸入規制、消毒、ねずみ等の駆除等の措置を講ずることができるようにしました。 これに伴い、動物媒介性の感染症を四類とし、それ以外の旧四類感染症を五類感染症として取り扱うようになりました。
平成19年4月1日の改正では、結核予防法は感染症法と統合され、結核は2類感染症となりました。
その後、感染症法の改正に基づき、下記に示すように感染症類型が変わりました。

「感染症法」制定の考え方

「感染症法」を制定するに当たっての基本的な考え方は次のとおりです。

○国・都道府県などは感染症の発生、拡大に備えた「事前対応型行政の構築」を目指す。
・感染症発生の状況を調査・還元する体制を強化し、流行予測などに役立てるとともに、予防のための情報を積極的に公表していく。
・感染症発生予防の基本指針・計画を策定し、関係する各方面との連携など総合的な取り組みを推進する。
・他の国々と連携し、感染症対策を実施していく。

○感染力や罹患した場合の症状の重さによって感染症を類型別に分類するとともに(下表参照)、類型別に医療体制を整える。

○患者の意志に基づく入院勧告制度、感染症類型に応じた就業規則、入院制度の規定、行政不服審査請求の特例など、人権尊重に配慮した手続きを保証する。

○検疫体制・動物由来感染症対策の整備を行う。

○感染症を感染させる動物等の調査や動物の輸入に係る届出制度を取り入れる。

感染症類型

種 類性 格主な対応・措置
1類感染症 感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症 ・原則入院
・建物の立ち入り制限・封鎖
・交通制限、就業制限
・消毒などの対物措置
2類感染症 感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症 ・状況に応じて入院
・就業制限
・消毒などの措置
3類感染症 感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こしうる感染症 ・就業制限
・消毒などの措置
4類感染症 人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、動物や物件の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症 ・動物の措置を含む消毒等の対物措置
5類感染症 国が感染症発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症 ・感染症発生状況の収集、分析とその結果の公開、提供
新型インフルエンザ等感染症 【新型インフルエンザ】新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、全国的かつ急速なまん延により国民の生命や健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの 【必要が認められる場合】
・健康状態の把握
・外出の自粛要請
【特に必要が認められる場合】
・1類感染症に準じた措置 
【再興型インフルエンザ】かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものが再興したものであって、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
指定感染症 既知の感染症(一類~三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、一類~三類感染症感染症等に準じた対応をしなければ、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがあるものとして政令に定める感染症(政令で指定、1年限定) 一類~三類感染症感染症等に準じた措置
新感染症 人から人に伝染すると認められる疾病であって、既知の感染症と症状等が明らかに異なるもので、罹患した場合の症状が重篤で、かつ国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがあると認められる感染症 【当初】都道府県知事が、厚生労働大臣の技術的指導・助言を得て個別に応急対応(緊急の場合は、厚生労働大臣が都道府県知事に指示)
【政令指定後】政令で症状等の要件を指定した後に一種感染症に準じた対応を行う

類型別感染症

1類感染症2類感染症3類感染症
(1)エボラ出血熱
(2)クリミア・ コンゴ出血熱
(3)痘そう
(4)南米出血熱
(5)ペスト
(6)マールブルグ病
(7)ラッサ熱
(1)急性灰白髄炎
(2)結核
(3)ジフテリア
(4)重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)
(5)中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)
(6)鳥インフルエンザ(H5N1)
(7)鳥インフルエンザ(H7N9)
(1)コレラ
(2)細菌性赤痢
(3)腸管出血性大腸菌感染症
(4)腸チフス
(5)パラチフス
4類感染症5類感染症(全数把握)5類感染症(定点把握)
(1)E型肝炎
(2)ウエストナイル熱
(3)A型肝炎
(4)エキノコックス症
(5)黄熱
(6)オウム病
(7)オムスク出血熱
(8)回帰熱
(9)キャサヌル森林病
(10)Q熱
(11)狂犬病
(12)コクシジオイデス症
(13)サル痘
(14)ジカウイルス感染症
(15)重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)
(16)腎症候性出血熱
(17)西部ウマ脳炎
(18)ダニ媒介脳炎
(19)炭疽
(20)チクングニア熱
(21)つつが虫病
(22)デング熱
(23)東部ウマ脳炎
(24)鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9を除く。)
(25)ニパウイルス感染症
(26)日本紅斑熱
(27)日本脳炎
(28)ハンタウイルス肺症候群
(29)Bウイルス病
(30)鼻疽
(31)ブルセラ症
(32)ベネズエラウマ脳炎
(33)ヘンドラウイルス感染症
(34)発しんチフス
(35)ボツリヌス症
(36)マラリア
(37)野兎病
(38)ライム病
(39)リッサウイルス感染症
(40)リフトバレー熱
(41)類鼻疽
(42)レジオネラ症
(43)レプトスピラ症
(44)ロッキー山紅斑熱
(1)アメーバ赤痢
(2)ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
(3)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症
(4)急性弛緩性麻痺(急性灰白髄炎を除く。) (5)急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)
(6)クリプトスポリジウム症
(7)クロイツフェルト・ヤコブ病
(8)劇症型溶血性レンサ球菌感染症
(9)後天性免疫不全症候群
(10)ジアルジア症
(11)侵襲性インフルエンザ菌感染症
(12)侵襲性髄膜炎菌感染症
(13)侵襲性肺炎球菌感染症
(14)水痘(入院例に限る。)
(15)先天性風しん症候群
(16)梅毒
(17)播種性クリプトコックス症
(18)破傷風
(19)バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症
(20)バンコマイシン耐性腸球菌感染症
(21)百日咳
(22)風しん
(23)麻しん
(24)薬剤耐性アシネトバクター感染症
(25)RSウイルス感染症
(26)咽頭結膜熱
(27)A型溶血性レンサ球菌咽頭炎
(28)感染性胃腸炎
(29)水痘
(30)手足口病
(31)伝染性紅斑
(32)突発性発しん
(33)ヘルパンギーナ
(34)流行性耳下腺炎
(35)インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)
(36)急性出血性結膜炎
(37)流行性角結膜炎
(38)性器クラミジア感染症
(39)性器ヘルペスウイルス感染症
(40)尖圭コンジローマ
(41)淋菌感染症
(42)感染性胃腸炎(ロタウイルスに限る。)
(43)クラミジア肺炎(オウム病を除く)
(44)細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌を原因として同定された場合を除く。)
(45)ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
(46)マイコプラズマ肺炎
(47)無菌性髄膜炎
(48)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
(49)薬剤耐性緑膿菌感染症