家庭用品の安全性
家庭用品の安全性について
家庭用品には、色々な種類の化学物質が様々な目的に利用されています。
これらは、家庭用品の機能や品質の向上をはかるために使われていますが、場合によってはこれが原因で健康被害を引き起こしてしまうことがあります。
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)」では、人体に危害を与える恐れがある有害物質として20種類(下表)の化学物質の使用が規制されています。
当所では行政検査として、その化学物質による健康被害を未然に防止するために、毎年「家庭用品規制法」に基づき一般に流通している家庭用品の安全性の確認とその実態を把握するために試買検査を行っています。
家庭用品規制法における規制対象物質
有害物質 | 用途 | 対象家庭用品 |
---|---|---|
ホルムアルデヒド ディルドリン DTTB1) |
樹脂加工材 〃 〃 |
繊維製品(下着、靴下、布おしめ、手袋等) 〃 〃 |
有機水銀化合物 トリフェニルすず化合物 トリブチルすず化合物 |
防菌防かび剤 〃 〃 |
繊維製品(下着、靴下、布おしめ、手袋等)家庭用接着剤、家庭用塗料、ワックス、くつ墨及びくつクリーム |
APO2) TDBPP3) BDBPP化合物4) |
防炎加工材 〃 〃 |
繊維製品(カーテン、床敷物、寝具等) 〃 〃 |
塩化ビニル メタノール テトラクロロエチレン トリクロロエチレン 塩化水素 硫酸 水酸化ナトリウム 水酸化カリウム |
噴射剤 溶 剤 〃 〃 洗浄剤 〃 〃 〃 |
家庭用エアゾル製品 〃 家庭用エアゾル製品、家庭用洗浄剤 〃 住宅用洗浄剤(液状) 〃 家庭用洗浄剤(液状) 〃 |
ジベン(a,h)ゾアントラセン ベンゾ(a)アントラセン ベンゾ(a)ピレン |
木材防腐・防虫剤 〃 〃 |
クレオソート油を含有する家庭用木材防虫剤、クレオソート油及びその混合物で処理された防腐木材及び防虫木材 |
アゾ化合物5) | 染料 | 繊維製品(下着、靴下、布おしめ、手袋等) 革製品(下着、手袋、帽子等) |
1)4,6-ジクロロ-7-(2,4,5-トリクロロフェノキシ)-2-トリフルオロメチルベンズイミダゾール
2)トリス(1-アジリジニル)ホルフィンオキシド
3)トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェイト
4)ビス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェイト化合物
5)化学的変化により容易に24種の特定芳香族アミンを生成するものに限る
繊維製品中のホルムアルデヒド
家庭用品規制法で規制値が設けられている化学物質のひとつ「ホルムアルデヒド」は各種樹脂原料として汎用されており、ホルムアルデヒド系の樹脂は繊維製品のしわ、縮み防止等の目的で使用されています。
しかし、この樹脂が分解し遊離するホルムアルデヒドは皮膚障害を引き起こす場合があるとのことで、身体に直接接触する度合の大きい下着、寝衣、靴下などの繊維製品については75ppm以下(子供、大人用製品について)、特に皮膚の感受性が高い乳幼児の製品は検出されてはならないという(16ppm以下)厳しい規制になっています。
表 ホルムアルデヒド規制の繊維製品
対象繊維製品 | 規制値 | |
---|---|---|
乳幼児用 (24ヶ月以下) |
おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、寝衣、手袋、くつした、中衣、外衣、帽子、寝具 | 検出せず (16ppm以下) |
子供用・大人用 | 下着、寝衣、手袋、くつした、たび | 75ppm以下 |
乳幼児用は子供・大人用と比べて規制値は厳しく且つ対象繊維製品が多い。
上記対象製品以外は規制対象外となる
*アセチルアセトン法(吸光度法)による測定
規制法対象外の繊維製品におけるホルムアルデヒド溶出量の実態調査
人の肌に直接触れ実態があまり把握されていない、道内小売店で販売されている家庭用品規制法対象外の繊維製品についてホルムアルデヒド溶出量の実態を調査しました*)。
調査した試料
平成24、25年にかけ購入したサポーター(手首・ひざ用他)30 試料、マスク26 試料およびワイシャツ8試料の計64試料。
試験方法
試料とする繊維部分を、サポーターおよびマスクは構成素材の別を問わず一点を1検体として、ワイシャツも同様に一試料1検体とし、さらに、「えり」「そで口」「本体」の3部位に分けて細切したものを試料としました。
公定法および酸加水分解抽出による樹脂加工/移染判別法(名古屋市衛研)に準じてホルムアルデヒドの溶出量を測定(検出下限10ppm)。
直接肌が触れやすい部位については、家庭用品規制法の下着などの繊維製品の規制値(75ppm)を目安として評価しました。
調査結果
サポーター(30試料)およびマスク(26試料)において、ホルムアルデヒドは検出されませんでした。
今回調査した試料について安全性が確保されていると考えられました。
中衣類に相当するワイシャツでは各試料各部位において、通産省(当時)通達の指導基準値 300ppmを超えるものはありませんでしたが、皮膚に直接接触する割合が高い「えり」で3試料、「そで口」で2試料、規制法の値75ppmを超えるものが認められ、更に調査した結果、ホルムアルデヒド系樹脂加工が施されていることを示す結果が得られました。
しかし、ホルムアルデヒドは水に溶けやすい性質です。 肌が敏感な方は安全対策のひとつとして着用前にお洗濯をすることで洗い流し除去することで、より安心して着用できます。
*)第65回北海道公衆衛生学会(札幌)で公表