駆虫薬ベイトの小面積散布について

〜北海道では、大学のキャンパスや公園などにキツネが出没する例が増えています。北大キャンパスでも近年キツネが繁殖するようになったため、衛生研究所と北大が共同で駆虫薬ベイトを用いた対策研究を行い、キャンパス内でのエキノコックス症感染リスクを大幅に減少させました〜
駆虫薬ベイトの散布
まず2014年春にキャンパス内のキツネの糞便を調べました。研究スタッフがキャンパス内を探索し、58個の糞便を採集して検査したところ、31個(53%)の糞便にエキノコックスの虫卵が含まれていました。
キツネ糞便の虫卵陽性率が高いと、キャンパスを利用する学生・職員・市民などがエキノコックス虫卵に接する可能性が高くなります。
そこで、エキノコックス駆虫薬を入れたキツネ用の餌(ベイト)を作り、2014〜2015年の夏から秋にかけて毎月1回、キャンパス全域の1 ha(100 m×100 m)に1個散布しました(1回約190個)。


ベイト散布の効果

2014〜2015年(第1フェーズ)の散布後、キツネの糞便を調査すると、エキノコックスの虫卵を含む糞便は合計144個中3個(2%)に減少しました。
しかし、依然として虫卵を含む糞便が見られたことは、キャンパス内にまだエキノコックスに感染したキツネがいることを示しています。これは、冬から春にかけてベイト散布を休止したことで、キャンパス内のキツネが再感染し、エキノコックスが虫卵を産生するまでに成長したことが原因と考えられました。
そこで、2016〜2018年(第2フェーズ)は散布を休止することなく、毎月1回の散布を継続しました。その結果、キャンパス内で採集したキツネの糞便(282個)からはエキノコックスの虫卵がまったく見つからなくなりました。
まとめ
これらのことから、北大程度の敷地(1〜2 km2)に対して1 haに1個、毎月1回ベイトを撒けば「虫卵を含む糞便を0にできる」ということが実証されました。
これは、同程度の面積地でベイト散布を行えば、その敷地内でエキノコックスに感染する確率を限りなくゼロに近づけられることを示しています。
今後は、この方法がさらにどこまで小さな面積でも機能するかを検証する必要があるでしょう。
この研究成果について詳しく知りたい方は、こちらのリンクから解説記事をご覧ください。